斉藤和義さんの曲で、歌うたいのバラッドという有名な曲がありますが、
その冒頭で、「嗚呼 唄うことは難しいことじゃない ただ 声に身をまかせ 頭の中をからっぽにするだけ・・」
というのがありますが、本当に良くとらえていて、素晴らしいと思うことがあります。
歌手が唄うとき、一体何を思いながらマイクに向かうのが一番良いのでしょうか?
上手く歌いたい!! これを伝えたいのだ!! 言われたことに忠実に歌おう!! 音程が正しいか?!
などなどいろんな思いがよぎることでしょう。
あるレコーディングが出来る楽器店の店長さんから、
「辻さん、アイドルを目指してる女の子がいるんだけど、歌を聴いてやってくれないか?」というお話があり、お店に行き、ご本人とお会いしました。
すると、オケが流れると、ビックリするくらい怖い顔をしながら、眉間にしわを寄せながら歌うのです。アイドルになりたい、というくらいなので、曲は元気のいい、楽しい曲なのですが、僕らには、全く歌の内容などは伝わってきません。
これもすぐに理由はピンと来ていました。
これは、間違いなく歌をいろんなプロデューサーに聴いてもらって、この人はこう言った、あの人はこう言った、ということを思い出して、その通りやろうと思っているがゆえに、どんな歌かというのをすっかり忘れてしまい、表現のしかた、歌い方、音程は合っているか?などということばかり気にしながら歌っているというわけです。
歌い終わって、「どうでしょうか?」と言われるので、「いろんな人から歌い方や表現方法などの話がありましたか?」と聞いたら、「はい、その通りやろうと努力しているところです。」とおっしゃる。
僕は、やっぱりな、と思って、「今、あなたが唄った歌から伝わってきたのは、そのあなたがもらったアドバイスが伝わってきました。」とお話しました。
また、別の例ですが、
以前に、面白い話を聞いたことがあります。あるプロモーション会社の社長さんにお会いして、その社長さんは絵を描くということも仕事になっており
そのアトリエにおじゃましたことがありました。
いろんなお話の中で、面白い話がありました。
レコーディングの時、あなたは、マイクの前でどんな気持ちで歌う??というものでした。
一つ面白い例として、こんな話をされて、かなり感銘を受けました。
その社長さん、会津弁のかなりきついおばあさんの語り、というのを聴いて、何故か、言葉は分からないのに、涙が出るほど感動して、その感動をたくさんの方々に届けたいと思い、そのおばあさんとともに、全国各地を回って、その語りを聴かせた、とのことでした。
すると、やはり、言葉は分からないのに、日本各地においても、みんなその語りのハートの様なものを感じ取り、やはりで涙を流して感動する方々が続出しました。
では、言葉が分からないなら、同じことということで、海外で、このおばあさんの語りを聴いていただいたら、どんな結果になるだろう??ということで、海外にともに行って、その語りを聴いていただいたら、何と、やはり、国内で起こったことと全く同じことが起こり、涙を流して聴いてくださるお客様がたくさんいらっしゃったというお話でした。
これと歌、というのに置き換えても同じこと、ということで、演者がどんな思いで歌っているか、というのをリスナーはそれを敏感に感じ取るというものでした。
それに加えて、その社長さん、「マイクの前で、うまく歌おうと思って唄うと、リスナーには、うまく歌おうって伝わっちゃうよ!」とおっしゃいました。
まさにそれがすべてと言えるのではと思うほど、その当時は衝撃を受けたのを覚えています。
上手く唄いたいのは十分わかるのですが、かといって、うまく唄おうと思って唄った歌は、「うまく唄おう」と伝わり、リスナーにとっては、全然面白くない曲になってしまうというわけです。
結論として、何を言いたいかということなのですが、
「嗚呼 唄うことは難しいことじゃない ただ 声に身をまかせ 頭の中をからっぽにするだけ・・」
ということの意味は、
人間というのは、頭で考えるだけの生き物ではありません。生きているだけでエネルギーを発しているというのがあります。言ってみるならば、「魂」というものかと思います。
歌というものは、その魂をぶつけていかないといけないのでは、という事なんです。
小手先で頭で考えていると、その小手先で考えていることがリスナーに伝わってしまいます。
歌詞があれば、リスナーにはその意味を自由に感じていただければ良いわけですし、歌詞がなければ、
その発する歌声に、音色に魂を乗せる気持ちで演奏する。
そんな思いで歌ったら、リスナーに本来のものが伝わるのでは?と思うのです。
前述した、アイドルを目指す女の子も、「いったん、いろんな方からの技術的なアドバイスを忘れて、歌そのものを表現しよう、という原点に立ち返りましょう」「技術は技術で練習する必要はありますが、本番の歌にその技術的なアドバイスを持ち込む必要はありませんよ。魂をぶつけていきましょう!」というお話しました。
会津弁のおばあさんの語り。それは、まさに、頭で表現するのではない、心、魂で表現する、というものが言葉を越えてリスナーのハートをぶち抜いているのではないか、と思うのです。
もちろん、歌は、技術的な練習が必要ですが、技術を磨いたからと言って、本当に心に触れる素晴らしい歌が唄えるわけではありません。
人生に於いて、辛いことや、悲しいこと、楽しいことや、嬉しいこと、様々なことを経験すると、なぜか、歌に幅や、深みが出ることがありますが、その理由は、まさに魂の成長から歌が成長する、ということなのではないかと思うのです。
あなたは、歌を唄うとき、マイクの前で「うまく唄おう、音程どうしよう」とか思って唄っていませんか?
頭の中で変に考えるのではなく、歌には魂をぶつけましょう。
頭の中はからっぽでいいのです・・・。あなたの魂が自然にリスナーのハートを打ち抜くのですから。
以上 歌を唄うときには、どんな気持ちで歌えばいいのか!? でした。
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