今回は趣向を変えて、クラシックの音楽のお話です。
僕らポピュラー音楽を制作してきた者にとっては、クラシックというものは全く知らない世界と言ってもいいものでした。
いえ、もちろん、チャイコフスキーや、ベートーベン、モーツァルト、ワーグナーとか、よく聴きますし、とても好きです。
作る、という部門に関して、全く知らないでいた、というお話です。
例えば、僕らが、クラシックで、まるでボブディランが歌うように、変な話ですが、何でもあり!という感じでの演奏を録音したとしたら、どんな印象を持たれるのでしょうね?
フォークの人がクラシックを聴いたり、ロックの人がクラシックを聴いたりすると、やっぱりどこか、クラシックを勉強した人たちとは全く違う切り口での聴き方になると思います。
僕らは、たぶんそれでいいと思うのですが、クラシックを勉強してきた方々は、それについてかなり違和感がありそうなのです。
たとえば、音程、バイオリン、チェロ、などのフレットの無い楽器は、音程から作らなければなりません。
何気なく聴いているクラシックも、この音程を決めるところから、血のにじむような大変な練習を小さいころからやって、ついにこの、普通に聴ける、というものが出来上がるのです。
それと、クラシックは、当たり前ですが、オリジナルではありません。
アコギの弾き語りの人が、オリジナルを歌います、って感じで歌う感覚とは、まるで違います。
楽譜に示された、細かいニュアンスをどう解釈するか! そこは指揮者の仕事かと思いますが、楽譜に書いてないことは基本的にはやりませんし、やったとしてもやはりそれは、経験と実績に裏打ちされたものが無いと、演奏家の方から、楽譜に書いてないぞ!という声が出たりするという話を聞いたことがあります。
細かいニュアンスを表現された楽譜に書かれたものをどう解釈し、どう表現するか。そして、それを表現するための演奏技術を磨く、というのは並大抵のことではできない世界なのです。
僕も、昔このクラシックの楽器の一つを曲の中に使って生で収録したこともありますが、それはそれは厳しい声を頂いたことがありました。
なるほど、クラシックというのは、ポップスみたいに自由に考えちゃいけない世界なんだ!と思ったことがありました。
僕も、バイオリン、チェロなどの楽器の演奏をお願いするときに、まず経歴を聞くのです。クラシック畑だけにいらっしゃる様な方は、とてもお願いできないのです。
何故なら、そんなことで、あまりにも僕らとは感覚が違うのです。それと大きなことはクラシックの世界だけの方は、まず、コードという概念がありません。
コードで自由にバイオリン、チェロで弾いてみて!!なーーんて、クラシックしか知らない方には、絶対言えないのです。
それと、音楽の大学で学ばれている基礎があり、あるものの解釈と演奏技術は素晴らしいのですが、自分でメロディーを作る、ということについては、不可能なことがほとんどです。当然、学校ではメロディーの作り方なんて学ぶ余地もありませんし、すでにある曲の解釈と技術を徹底的に鍛えられているので、逆にそこが僕らにとっては難しいところと言えるのです。
とはいえ、最近は、音楽大学を出られた方でも、コードをご存知の方もいらっしゃり、ある意味、クラシックとポピュラーミュージックへの理解もある方も増えてきました。
雅音人(がねっと)のホールでのコンサートなどにお願いするピアニスト、チェリスト、シンセの方々は皆、クラシック畑の音大卒の方ですが、コードの理解もあり、このポピュラーミュージックの制作についても自由で、大変理解があり、本当にありがたい存在です。
ところが、クラシックの世界では、シンセの方の話によると、ピアノなんだからシンセなんてひいちゃだめ、と先生に言われていたそうですが、そう言われると余計やりたくなったというわけで、今考えれば当時は少しアウトロー的な感じかも知れませんが、今でこそ、そういう方だからこそ、こういう制作に参加していただけるのです。
ということで、クラシックというのは、どこまでも学問の世界で、何でもあり、という世界ではありません。
僕の制作では、ここにピアノが来て、ホーンセクションも後半で、ここでバイオリンのソロ、バンジョーを入れるとどうなるだろう?もちろんドラム、ベースの中にパーカッションを入れて・・・などと、自由に頭の中で考えたものをPCを使って音にしてみて組み合わせて作っています。
そんな中に、クラシックオンリーの方は入りようが無いですよね。ということで、大きな隔たった壁があり、同じ音楽であっても立ち入れない世界があるようにいまだに感じています。
そんなわけで、今回は、僕らポピュラーミュージックの制作と、クラシックの世界とは大きな隔たりがあるというお話でした。
以上 クラシックは音楽ではあるが、やっぱり学問である!!でした。
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